私はゲストの「笑い袋」 クラブ担当が見せたエンタメへの思い

2017/12/05

グッドタイム リビング
ライフスタイル

グッドタイムクラブ担当 加賀 美智子さん
グッドタイムクラブ担当 加賀 美智子さん

INTERVIEW

グッドタイム リビング センター南 サービススタッフ 加賀 美智子さんインタビュー

私はゲストの「笑い袋」
クラブ担当が見せたエンターテインメントへの思い

「私は、自分がこの仕事に向いているとは思っていないんです。引きこもり、人見知りなので。」

意外な事をおっしゃるのは、加賀 美智子さん。グッドタイム リビング センター南に入って2年目。ゲストのエンタテインメント、「グッドタイムクラブ」の企画・運営を担当している。

安倍:なぜ介護の仕事に入られたのですか?

加賀:実を言うと、始めは志があって介護の仕事に就いたわけではありません。以前は雑誌の編集・記者の仕事をしていました。企画を立てて、インタビューして記事を書くという仕事をバブルの時代から、フリーランスで20年ほど続けました。でもインターネットの普及により、雑誌の仕事が激減しました。2011年に東日本大震災で就くはずの仕事がなくなってしまい、でも仕事がないと生活できないという事態になって、たまたま母が倒れたときに介護の資格を取得していたおかげでなんとか就職できたのがこの世界だったというわけです。

安倍:エンターテインメントを担当するようになったきっかけは?

加賀:他社で介護スタッフとして約4年、仕事をしているときに感じたことは、入居者への「楽しみ」の提供が、ないがしろにされがちだという現実です。「それでいいの?」と思いました。

元々、人を盛り上げるのが大好き、という加賀さん。みんなで笑うのが大好き、と屈託なく話す。前の職場でもレクリエーション担当をやっていたというから根っからの“エンタメ好き”である。

加賀:でも、レクリエーションの時間を作ろうとすると、現場に阻まれることがあります。「人手が足りないのに、なぜそのようなことをするの?」というように。確かに会場を準備したり、入居者を部屋から会場に案内したりするのにも人手が必要になるので、レクリエーションをすると余計な仕事が増えるだけだとか、そのようなことをしてる間にあれもこれもできるじゃないか、といいたくなるのはわかります。「それでも楽しむことは大事でしょう?」と声を上げてもなかなか理解してもらえなかったですね。人手が足りない状況では、無理もないことなのですが。

そして、入居者から言われた一言にショックを受けたという加賀さん。それが「私たち、囚人じゃないんだけど」という言葉だった。
確かに、施設によっては流れ作業的に入居者を食事に連れて行ったり、入浴してもらったり、ということがあるのは想像にかたくない。が、加賀さんはずっと違和感があったという。
そのような時、たまたまグッドタイム リビング センター南が新設されると知りそして、スタッフ募集を目にした。

加賀:え?レクリエーション担当の募集があるの?それなら私のやりたいことが叶いそうだ、と飛びつきました。

安倍:まさに希望の仕事が目の前に現れたんですね。実際、お仕事始めてどうでしたか?

加賀:まず私自身が楽しんでいます。一口にクラブといっても色々な種類があるんですよ。クラフト、体操、脳トレ系に、音楽。基本的にゲストが楽しめる内容であればなんでもありです。1日に大体2~5クラブあり、その中でゲストが好きなものを選んで参加するというグッドタイムクラブのスタイルは、理想的なものではないかという手ごたえを感じています。

グッドタイムクラブの一つ、クラフト。かわいらしい人形をみんなで作っている。実は、加賀さんの人知れぬ努力と工夫が詰まっていた。

加賀:入居されているゲストには、物作りの好きな方が多くいらっしゃいます。まず試作して完成させた状態からそれをバラして、どうしたらゲストが簡単に出来るかを考えて改めて型紙を起こしたり、素材を工夫したりするんです。例えば針や糸を使わないで済むようにシールになったフェルトで貼るだけにするなど、そういうちょっとしたアイデアを考えるのが好きですね。

なんともすごいプロ意識だ。とにかくゲストに喜んでもらおう、楽しんでもらおうという意気込みがひしひしと伝わってくる。

加賀:他のゲストやご家族さまが出来上がった作品をご覧になった時に、「これが売っていたら買いたい!」と思うようなもの、見て欲しくなるようなレベルのものを作っていただけるようにすることが私の仕事だと考えています。

とにかく徹底している。キーワードは「楽しむ」。加賀さん自身、クラブをとことん「楽しんで」いるようだ。

加賀:面白そうなことはみんな試してみたいですね。編集者の仕事は、まず企画を立てて通します。企画が通れば自分の好きなページを増やせるじゃないですか。今の仕事も感覚的には変わりません。だからクラブを運営しているときがとても楽しいです。全部、私自身が楽しめるものばかりですから。アメリカの心理学者の言葉で「人は楽しいから笑うのではない、笑うから楽しくなるんだ」という言葉があるのですが、本当にそう思います。

これは真理だ。そう思った。「笑うから人は楽しくなる。」昔から言うではないか。「笑う門には福来る」と。

加賀:私はゲストの「笑い袋」でいいと思っているんです。私が「ワハハ」と笑うとゲストもつられて「ワハハ」と笑ってくださる。皆で笑っているところをご覧になったゲストが「なんだか楽しそうね」とお立ち寄りになる。そしてたくさん笑って「あー楽しかった」とお帰りいただくというのが理想です。一番嬉しいのはゲストが「あなたの顔見にきたの。あなたが元気で笑っていれば何もしなくてもいいぐらいよ」と言ってくださること。そんな嬉しい言葉はないですね。ゲストに幸せな気持ちにしていただく、ありがたい仕事だと思います。

加賀さん、すごい、超ポジティブ人間なんだなぁ、と思って話を聞いていた。そうしたら、意外な事をおっしゃる。

加賀:でも私、この仕事に向いてるタイプだとは思っていないです。本来は引きこもり、人見知りなので・・・

安倍:え?

加賀:仕事だからできるというところが大きいですね。サービス精神は取材の仕事で培われたのだと思います。初対面の人から詳しく話を聞くためには、一回一回全力でぶつからないと相手は心を開いて話してくれません。ゲストに対しても同じだと思います。こちらが全力で関わるからこそ心を開いてくださる。人ってただ「さあ楽しんでください」といわれて楽しめるものではないでしょう? 正直に言うと、私自身は子供のころから皆で一緒に何かをするのは苦手なのです。運動会とかお遊戯とか・・・だからこそ、そんな私でも楽しめるプログラムを提供していきたいのです。「みんな一緒」が苦手なゲストにも楽しいって言っていただけますように!、という意気込みで取り組んでいます。

このエピソードを聞いて、やはり、加賀さんはこの仕事、向いていると思った。ご本人には言わなかったが・・・

さて、フロアには何かが敷いてある。何かのスポーツのようなものに見えるが・・・

加賀:これから“ターゲットボッチャ”の大会を行います。点数表に玉を投げて得点を競う競技で、パラリンピックで実際に行う競技を少し変形させたグッドタイム リビングオリジナルの競技です。

実際に筆者もやってみた。意外と難しい。

加賀:肘を固定して手首のスナップで投げるオリジナルの「あーら奥さま投法」というのが有効で、力が弱いゲストや車椅子のゲストでも十分対等に戦えるところがいいんです。ゲームのプログラムも人気がありますね。ゲストの皆さまも熱くなります。勝ちたいとかうまくやりたいという気持ちは人の本能なのでしょうね。

最後に加賀さんが話したことはとても大切な事だと思った。それは「家族」へのきめ細かい気配りだ。

加賀:家族を人の手に任せることには、やはり少なからず罪悪感があるものです。日本はまだまだ家族の世話は家族が見るという考えがありますから。だからこそ、ゲストのご家族さまに「お母さまは毎日楽しんでますよ。大丈夫ですよ。」とお伝えしたい。クラフト作品などの宝物をお見せできると説得力も高まりますよね。
サロンの前にゲストの居室に通じるエレベーターがあるので、来館したご家族さまは必ず前をお通りになります。クラブの最中でなければサロンの外に出て、できるだけご家族さまに報告するようにしています。お母さま(お父さま)はこのようなクラブに参加していらっしゃいますよ、とか、今日はこんなことをされました、とか。
そういうお話しをすると、ご家族さまはとても安心したお顔をされます。

「うちでは何もしなかったのに、こんなことができるんですか!」
「ええ、とてもいい作品を作られましたよ。褒めてさしあげてくださいね」などというやりとりをすることもあります。家族って意外と面と向かって褒めないものですから。ときには「○○様に、こういう風にお話すると、きっとお喜びになりますよ」などとアドバイスさせていただきます。そうすると後で「喜んでいました!」と教えてくださったり。ゲストだけではなく、ご家族さまも喜んでくださってのクラブなのだと思います。

加賀さんはご家族さまからいろいろ話を聞いて、それをヒントにクラブの活動に生かせないか、常に考えているという。たくさんのゲスト、そしてご家族の皆さま。情報がこんがらかったりしないのだろうか?

加賀:ご家族さまとのコミュニケーションも、ゲストを知る上でとても大事だと思います。直接お顔を合わせてお話しをさせていただくせいか、どなたのご家族さまなのか自然と覚えられますね。
ゲストとも出来る限りお一人おひとりとお話しするようにしています。クラブが終わった後に、ゲストがわざわざおしゃべりに来てくださることも多いんですよ。「今日は楽しかったわね」とか。「明日は、あれが楽しみだわ」とか。ありがたいですね。

そう言って目を細める加賀さん。心底、仕事を楽しんでいる、と思った。「笑うから人は楽しくなる」エンターテインメントはやらされるものじゃない。皆で作り上げていくもの。心から笑える環境があるって素晴らしい。

インタビュアー

安倍 宏行 / あべ ひろゆき

日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。

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